Interview for kenji_aoki

5.Kenji Aoki(Photographer)/ 青木健二(フォトグラファー)

PROFILE

1968 年、東京都生まれ。桑沢デザイン研究所卒業後、IIGURA STUDIO 勤務を経て 1993 年に青木健二写真事務所を設立。2007 年よりフィールドを海外に広げ、2010 年、NY に拠点を移す。数多くの企業広告に独自の世界観が起用され、ワールドクライアントのキャンペーンや The New York Times Magazine など活躍を広げる。スチルライフ(静物写真)フォトグラファーとして世界屈指の写真家として知られている。http://www.aokiphoto.com/

Question & Answer

  • Q1. 写真を始めたきっかけについて、桑沢デザイン研究所を卒業されていますが、そこで写真を 学ばれたのでしょうか。また、この学校に入るきっかけ、理由なども教えていただけますでしょうか。 そして、この学校に入る前の学生時代は写真を学ぶベースとなるクリエイティブな環境が周りにあったのでしょうか。
  • Kenji Aoki(以下KA)美術系に進学することは決めていましたが、 アートディレクターになる事を想定していたため美術大学で教授していた 伯父からのアドバイスも含めてデザインに特化した学校を選びました。 バウハウスの教育理念、マン・レイやモホリ・ナジの手法の一つであるフォトグラム、 光自体を造形要素とした写真技法から得た感覚は、現在のスタイルの軸になっていると考えます。 学生時代の頃はコマーシャルスタジオでのアルバイトで、広告や雑誌の撮影現場を幾つも体験する事ができました。 中でも、当時、清水行雄さんが1枚のスチルライフ写真を追求する姿を見て、 商業と芸術の隙間を繋ぐ精神を感じる事が出来たと考えています。
  • Q2 当時、様々なジャンルの写真を撮られている中で、 量産される写真ではなく一枚の写真のグレードを上げること、 また風景や人物よりもブツを撮ることが一番難しかったことから、 専門的にブ ツ撮りを行うことを選んだと伺ったのですが、やはり当時、 ブツ撮りは一番難しいものだったのでしょうか。当時のブツ撮りに対する考えを教えていただけると幸いです。
  • KA:全てのジャンルの写真に、簡単には到達できない世界が存在します。20代後半に差し掛かった頃、様々なジャンルの撮影を引き受けるというスタイルに疑問を持ち始めました。どこかで軌道修正してひとつのジャンルに四六時中向き合わなければ真のプロフェッショナルにはなれない、と感じたのです。スチルライフは、自らの個性を発揮出来ると同時に『芸術家を気取っている場合ではない』という事を正確に分からせてくれるジャンルでした。商品写真を思う通りにfilm一発撮りで構築するには高い技術を修練する必要がありました。昔伯父に言われた「芸術家である前に職人であれ」という言葉がさらに私をその世界へ引き込んだのです。
  • Q3. 青木さんの写真は基本のブツ撮りをベースに、イメージで被写体を包み、内に秘めた製品の 根幹の部分が強くシンプルに、時にはダイナミックに写真に表れている印象を受け、とても刺激を 頂いております。過去のインタビューを拝見して、写真を撮る上で、技術面では「テクスチャー(質 感)」を、イメージの部分では「どう表現するのか/被写体の何を写すべきなのか」と主におっしゃ られていましたが、改めて、被写体(製品)を写す際のこだわりや重要視している点、青木さんが 思う良い静物写真、またその写真の判断基準を教えていただけますでしょうか。
  • KA:絵画で完全に描き終わった状態よりも、制作途中の方が、なぜかとても美しかったというケースがよくあります。これは、描きすぎてしまうと主題をいつのまにか失ってしまう事。カメラは被写体の要素の全てを一瞬で模写できる装置です。 この情報量に惑わされずに主題以外に光線をあてない事や模写しすぎないことで視覚伝達を明快にする事を心がけています。上手なだけでは『いい絵』にはならないという事ですね。 
  • Q4. 最近のお仕事について印象的なお仕事のエピソードを、1つ教えていただけますでしょうか。
  • KA:TIME誌のカバー撮影で、アメリカの旧態依然とした高校教師の組合に対してある資産家が訴訟を起こしたというニュースを撮影する機会がありました。腐敗した社会に制裁をというテーマで、NYやアメリカを意味する『apple』に裁判官のハンマーと組み合わせたROTTEN APPLESと名付けられたイメージです。発売と同時にTIME社には抗議する教師の組合がデモを行い、数日間、表紙イメージを誇張したパロディがネットに出回っていたのです。教師側からの抗議は直接『意図を説明しろ』と写真を撮影した私にも来た程です。ジャーナリズムに写真家が関わる責任を痛感しました。
  • Q5 最後に、本誌「NUZ」のテーマは「Incentive(刺激)」です。青木さんのお仕事、写真、生 活の中で、ご自身の考え方、価値観に影響を及ぼした刺激的なエピソードや最近こういった新たな 発見があったなど、お一つありましたら教えていただけますでしょうか。
  • KA:千のナイフ。25年前インドを旅していた時にカセットテープで繰り返し聞いていた坂本龍一氏1978年デビュー曲です。ゴアでサイケデリックトランスが走り始めた頃、海岸に朝日が昇るタイミングで、鼓膜が破ける程の大音量でかかったこの曲は私の記憶のIncentiveです。 宇宙を構成する全ての物質エネルギーと交信しているような感覚をもたらす、この曲の構成は改めて、神業と感じています。