Interview for yuya_nara

8.Yuya Nara(Hair Make Artist)/ 奈良裕也(美容師/ヘアメイクアーティスト)

PROFILE

1980 年生まれ。埼玉県出身。SHIMA 原宿でアートディレクターを務める傍ら、ファッション誌、カタログ、SHOW 等でヘアアーティストとして活躍中。国内外のファッショニスタやセレブからの指名も多い。http://www.shima-hair.com/

Question & Answer

ファッション雑誌「smart」での専属モデル、ファッションヘアサロン雑誌「CHOKiCHOKi」では初代キングとして長年モデルを務め、サロンモデルや読者モデルの先駆けを作った奈良裕也。美容業界のみならず、原宿ストリート界では知る人はいない個性的で圧倒的なセンス、スタイルは当時の若者から絶大な支持を得ていた有名ファッショニスタである。また美容師、ヘアメイクアーティストとしてもレディガガや加藤ミリヤ、草間彌生からK-POPまで、国外問わず多くの著名人のヘアスタイリングを手掛けている。本誌では、美容業界の第一線で活躍する所以、また美容師、ファッショニスタとしての考えを伺った。
  • Q1.美容師になったきっかけを教えていただけますか?
  • Yuya Nara(以下YN): ずっと絵(油絵)を習っていたので、美大に行くか迷っていました。でもアート系はお金にならないので難しいかなと思っていて、高校生で卒業後の進路決めるときがあったんですが、ファッションも好きだからファッションの世界かアートか、またヘアメイクも興味があって、母親も美容師をやっていたこともあり、他にもスタイリストはどうかなとか、デザイナーも服を作るのは好きじゃなかったので違うかななど、そういった感じで色々と自分のやりたいことを絞っていく内に美容師の学校に進学することを決めました。
  • Q2.学生時代はどんな感じでしたか?
  • YN: コギャルが真っ盛りのギャル男というか、そういう時代ですね(笑)。みんな肌を焼いているチーマーがいてみたいな。ヤマンバに行く前のギャルの原型ですね。僕自身も当時、焼いてたりしてました。
  • Q3.出身が埼玉ということで、学生時代は東京のお店にはよく来ていたのですか?
  • YN: 高校から東京だったので、通いでよく来ていました。格好も色々していて、海がないのに丘サーファーだったり、スケーターがキテいて、スケーターのブランドばっかり着ていたりとか、当時、武田真治さんといしだ壱成さんが流行っていて、デニムだけの格好の時もあったり、肌を焼いてちょっと黒くなった時もあったり、全部やって、やっていくうちに自分に合うスタイルが見つかった感じですね。
  • Q4.サロンモデルや読者モデルを学生時代、多数されていましたがきっかけを教えていただけますか?
  • YN: 街で美容師さんに声をかけられて、こういうのがあるから出て欲しいっていう感じでした。ちょうど僕達の時代から読者モデルっていう言葉が出始めて、それまでは読者モデルというスタイルはなかったと思います。
  • Q5.雑誌「チョキチョキ」読者モデルのきっかけを教えていただけますか?
  • YN: 同じく街で編集部の方に声をかけられて。最初はスナップみたいな感じでしたね。
  • Q6.雑誌「チョキチョキ」では初代キングとして活躍されていました。他のキングとは違う自分だけのスタイルを表現することは、当時、意識されたのでしょうか。
  • YN: そんなにはないですが、やはり普通の誌面で出てくるモデルさんとは違うので、僕は身長が164cmしかなかったんですが、自分に合わせた身長と体形の中で何が似合うかを選んで服を着ていたので、結果、それがよかったですし、ゆくゆくそれが自分のスタイルになったんだと思います。
  • Q7.ご自身で企画を出されたこともあったのですか?
  • YN: ありました。自分で好きなように何ページやっていいよ、みたいな感じだったと思います。その中でも一番印象に残っているのは男の子を10人、いま原宿などでイケてる街の若者10人を捕まえて、ファッションとヘアで魅せる企画のようなものでした。実際、誌面でも載りましたね。
  • Q8.ファッションを楽しむことに加えて読者モデルとして、読者の方に「魅せる/伝える」ことがモデルを通して増えたと思うのですが、意識的にご自身のファッションを表現する意識は変わりましたか?
  • YN: 変わってきたかもしれません。その当時、自分の中では一番イケてる格好をしていたと思います。今、考えてみればすごい派手な格好でしたけどね。
  • Q9.第一線で流行のファッションを伝える側として、毎号様々なファッションスタイルをされていました。毎号、新しいファッションスタイルを考えるのは大変ではなかったのですか?
  • YN: そこまで、深くは掘り下げて考えてなかったですが、自然的に新しいモノなどが入ってくる環境だったので、周りの友達やお店であったり、そういうのを自分なりに解釈して、服に落とし込んで、表現したことがよかったのかなと思います。 今でも、現場で会う有名なスタイリストさんとかに「雑誌を見てたよ」と言われることもあって、当時はあまり意識せずに少し恥ずかしながらやっていたんですけど、もちろんモデルとして出れて後悔はないですし、一つの思い入れとして誌面に出れてよかったなと思います。
  • Q10.現代のファッションについて、ファストファッションやノームコアなどのキーワードをよく耳にすることが多くなりましたが、ファッションの移り変わりについて、奈良さんが今、ご自身で感じられていることを教えていただけますか?
  • YN: 僕がチョキチョキに出ていたときは、若い人が洋服にすごいお金を使う時代で、普通にディオールオムを買ったり、何十万する服にお金を出したりするのが多かったんですが、でも今の若い人たちはあまり服を買わないので、もうちょっと服にお金をかけて楽しんでもいいのかなと思います。 ノームコアについても、あれは外国人か、もしくはすごく素材のイイ人がカッコよく見えるもので、僕ら日本人が着こなすのは少し難しいかなと思っています。 若い子も色々なファッションにチャレンジして、それで失敗して経験して、そこから自分の似合うスタイルを探していけばいいと思います。
  • Q11.個人的に奈良さんの髪型が印象的なのですが、今のヘアスタイルになったきっかけを教えていただけますか?
  • YN: ヘアメイクを始めていくときに、幼く見えるのが嫌で、現場に行ってもなめられないように髪を伸ばしました。伸ばしたら伸ばしたで意外と似合っていたので、反対に切るのも怖くなり、今の髪型を続けています。
  • Q12.ヘアメイクのお仕事を始めたきっかけはあったのですか?
  • YN: 27か28歳の時だと思うのですが、自分的にそろそろやりたいなっていう時期があって、ちょうどSHIMAの中でも美容師の仕事が上手くいっていたので、元々、ヘアメイクをやりたくて美容師を始めていたことから、必然的にヘアメイクの仕事をするようになりました。
  • Q13.最初のヘアメイクのお仕事について教えていただけますか?
  • YN: ワイズさんのレッドレーベルとヨシコクリレーションというアクセサリーのコラボのカタログ撮影のお仕事でした。その時はカメラマンが荒木さん(荒木経惟)で、メイクがUDAさんっていうすごい有名な方で、またワイズとヨシコクリエーションのジュエリーのコラボだったので、一発目がこれでいいのかなっていうくらいすごく緊張しました。
  • Q14.奈良さんのお仕事について、サロンワークとヘアメイクの関係性について教えていただけますか?
  • YN: それぞれの良さをリンクできればと思っています。ヘアメイクだけだとお客さんと接する中で感じる今の街のリアルな流行であったり、またハサミも切っていないともちろん腕が鈍りますし、あと長く来ていただいているお客さんとの関係などもあるので、サロンワークは自分の中ではなくてはならないものだと思っています。逆にサロンワークだけだと、少し物足りなさを感じてしまうので、刺激を受けたくヘアメイクもやっているのだと思います。
  • Q15.他誌で、美容師として第一線で活躍するために「好きなことにマニアックであること」とおっしゃっていたのですが、その点についてご意見を伺えますか?
  • YN: これだけは人に負けないような自分が長けている強いモノがあった方がいいと思います。これだけ沢山、美容師、美容院がある中で、どう自分をクリエイションするか、目立たせるかが大事だと思うので、自分がちょっとでも好きな部分を伸ばしていくのがベストじゃないかなと僕は思っています。
  • Q16,奈良さん自身についてのマニアックなことを教えていただけますか?
  • YN: 漫画が好きであったり、他にはカルチャーだと昔の伝統工芸や和のテイストが入ったものが好きですね。
  • Q17.漫画がお好きとのことで、最近のおススメはありますか?
  • YN: 「島耕作」シリーズなどで有名な漫画家、弘兼憲史さんが描いている「黄昏流星群」です。老人たちの恋愛話で、3,4年前にドラマにもなったと思います。他にもジャンルに限らず色んな漫画を読むんですが、特にヒューマンドラマやサクセスストーリー系の漫画が好きでよく読んでいますね。
  • Q18.美容師の在り方について、ご自身の経験から考えを伺えますか?
  • YN: 美容師さんって意外と仲間内で交流を持つことが多くて、なかなか外と繋がることが少ないのかなと思っています。自分は、ファッションの一つとして美容師、美容部門を見て仕事を捉えているので、自分の経験からもっといろんな人の繋がりであったり、美容師の枠を超えて色々なことをやった方が楽しいかなと感じています。でも人それぞれに自分のやり方があるので一概には言えないんですけど、そういう人がもっと増えてくれば美容業界も楽しくなるのかなと思っています。
  • Q19.今後の展望を教えていただけますか?
  • YN: 体力の続く限りは今の仕事を継続してやっていきたいんですが、ゆくゆくは撮影などでアートディレクションできる立場で色々やりたいなと思いつつ、またお店に立つ日もいつかはなくなると思うので、それをいつくらいの目途にしようかなと考えています。
  • Q20. ご自身が感じられた最近の刺激または、考え方や価値観において、再発見したことを教えていただけますか。
  • YN: この歳になるとやっぱり周りと比べて自分が上の方になるので、焦りや緊張が若いころよりかは少なくなってきたんですよね。 今、加藤ミリヤちゃんのヘアメイクを担当していて、今年の3~5月にツアーを一緒に回ったんですが、その時に結構失敗をしてしまったことがありました。慣れてきて余裕が出てくるとどうしても気が緩くなる部分があって、でもそれに対して年下なんですけど彼女がきちんと指摘してくれて、それがとてもイイ刺激になったし、まだまだダメだなと改めて感じました。そういった経験から、今後も自分に対して初心を忘れないように、さらに真剣に仕事に挑もうと思っています。